猫の美学 犬の美学
「猫は死期を悟ると身を隠す」という話をご存知でしょうか?
すべての猫がそうだとは決していえませんが、これは事実です。 すくなくとも私の周囲の人間には、この手の体験をした人が何人もいます。 例えばそのひとつはこれ。 私の知人のお宅で飼っていた猫が、あるとき突然行方をくらましました。 その猫は約一週間後、ガリガリに痩せてふらふらになって、泥だらけの姿で帰ってきました。 彼女はあわてて病院に連れて行き、治療をしてもらい、次の日の予約をとりつけて帰ってきました。その晩、猫は衰弱してふらふらになっているくせに、ドアをカリカリと掻き、外へ出て行こうとします。仕方がないので彼女はドアを開けてやりましたが、そんな状態で放してやるわけには当然いかず、猫のあとを一緒について行きました。この時点で彼女は何か悟るものがあったらしく、よたよたと進む猫に声をかけつつ、泣きながらついて行ったそうです。 猫は、最期の力を振り絞るように植え込みの根元に倒れこみ、茂みに身を隠し息絶えました。 これは実話です。 私は幼い頃からこの話は祖母に聞いていて、まぁそんなもんなんだな、と自然に受け入れていたのですが、どうしてなんでしょうね。今更不思議に思いました。 で、ならば犬はどんな風に死をむかえるんだろう、と考えてみました。 彼らは主人に対する忠誠心というか、愛情の強い種族だから、猫とは逆に死期を悟ると飼い主に会いにくるんだろうか? 帰らぬ主人を待ち続ける犬のエピソードはよく聞きますが(忠犬ハチ公ですね)、犬の死に際の話はあんまり聞きません。そこでちょっと犬の死にまつわる逸話を探してみたら、ありました!殉死です。「犬の殉死」という記録が残っているそうです。そのひとつがこれ。 第一次大戦中の話です。イギリス軍に軍用犬として飼われていたコリーが、訓練係の軍曹が戦死、火葬されるのを見たときにその火のなかに飛び込み、自分も焼け死んでしまったそうです。 まあしかしこのような場合、自殺的な行為ではありますが、犬にとっては死というものを自覚しないひたむきな愛情の結果であって、自殺とは異なりますね。結果的に殉死になってしまった、が正解かな。 そう、犬はそれでわかるんです。 では猫は? 猫はどうして死に様を人に見せまいとするのでしょう? ノラネコもイエネコ同様に身を隠して死ぬのでしょうか? やはり私にはわかりません。 猫とか動物に関する専門知識が全くないので、これ以上推測をしてみたところでなんだか感情的というか文学的(?)なものになってしまうでしょう。 それこそ『死に様の美学』といったような。 本当はちゃんと生物学的な理由があるんでしょうね。 しかし我が家の三毛猫のふてぶてしい顔を見るに、「お前は死ぬときも私に弱みなんかみせずに、ぜったいどこかでしらないうちに死んでくるんだろうなぁ」と思えて仕方がないのです。 たぶんあいつはそういうやつです。(←すごく感情的な見解) この文章を書きながら彼女(うちの猫)が死ぬ時のことを想像してしまい、不覚にも本気で泣きそうになったのでした。
by tou-g
| 2005-05-29 19:42
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